「あまりにも不十分な国基準、あまりにも不公平な都加算 」

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国基準のみによる定員278名の保育所の職員配置と予算を検証すると

定員200名以上の大きい保育所が、余裕のある思弁学を受け、理想的には剰余金が出るという考えは誤りです。実際は、国基準だけでは施設を運営していくために必要な職員を採用することさえままならない状態です。加えて、子供や家庭の変化により3歳以上の保育は負担感が増大しています。定員が多ければそれに比例して問題を抱えた子供たちの数も多くなります。
3歳児20人に保育士1人、4歳以上児30人に保育士1人などと言う、今から30年、50年も昔の基準は直ちに見直されなくてはなりません。ましてや、低い保育単価をさらに下げようなどという事は、とうてい納得できるものではありません。
定員278名の八王子共励保育園の場合、子供たちの人数に応じてクラスを分け国基準だけで保育士を配置していくと、左の図のように5歳児3クラスに保育士が全く配置できない状況となります。
 
右のグラフの左部分は国基準だけの年間補助額1億5,859万円から保育所職員22名を採用し、児童の一般生活費と管理費を差し引くと、残りが2,116蔓延である事を示しています。
この残った額で、定員278名の保育所が機能するために保育士5名、調理員3名、用務員1名を雇おうとすると、年収250万から300万の職員を雇っても、それだけで834万円の赤字となってしまいます。(詳細は小冊子「あまりにも不十分な国基準」参照)非常勤保育士や施設整備積立金などのお金も捻出できません。
これが「あまりにも不十分な国基準」といわれる実態です。

※国基準職員の人件費の算出は日本保育協会が発行している『国の定める保育単価試算表』から計算しました。

 

定員規模に存在するあまりに不公平な都加算

どうして、定員278名より定員160名の方が補助額が多いの?


グラフ3:都・一般保育所対象加算 定員別補助年額左のグラフは、東京都一般保育所事業加算の年間総額を定員別に比較したものです。なんと、定員278名より、定員160名の方が受け取る補助額が多くなっています。定員160名の方が定員278名より費用がかかるとでもいうのでしょうか。 保育する子供の数は118名も多いのにです。
定員278名は定員100名の35%引き!?

左のグラフは定員別に夜保育所の、3歳以上に対する一人あたりの国・都年間補助額をパーセント表示したものです。驚いた事に278名の3歳以上児一人あたりの補助額は、定員100名の65%です。なんと35%も低い補助額となっています。これには驚きました。同じ子供を保育するのに、このような格差があって良いのでしょうか。
 
東京都児童福祉審議会の最終答申に対し、都内の9区市議会は地方自治法第99条の規定により、都知事に対し意見書を提出しました。それには、次のように書かれていました。
  • 『そもそも、根本問題というべき国基準の不十分さにはひと言の言及もしないまま、都加算補助の「見直し」や「包括化」を提言するのは、とうてい納得できるものではない。今後問われるのは、今回の児童福祉審議会の意見具申に対する東京都の対応である。』
  • 清瀬市議会(他、豊島区議会・中野区議会・北区議会・東久留米市議会・東村山市議会・羽村市議会・多摩市議会・立川市議会)

このように、多くの区市議会が東京都知事に対して憤りを露わにした意見書を提出するようなことは、かつてあったでしょうか。 
さて、本稿では、区市議会が断言している「国基準の不十分さ」と、『都加算の不十分さ』について保育現場として検証したいと思います。
 
どうぞこの小冊子を元に保育現場での議論を広げていただきたいと思います。
定員の大きい保育所は全国規模で力を合わせることが必要になると思います。そうしたきっかけになればとも思います。どうぞよろしくお願い致します。

 

社会福祉法人同志舎 共励こども園
理事長 長田安司